定期券の思い出

長い期間休校となっており定期券もあまり使用せずなのだが

4月に入ると期限切れとなるためにマネーの要求があった。

そんな微妙な気分の今日は雨模様。


定期という言葉を聞いて脳裏にふと懐かしい光景が甦る。

今宵は若かりしKATSUの甘酸っぱい青春のひと時をお話ししよう。

専門学生として日々勉学に励んでいる気分になっていた頃のこと。

大阪府のとあるシティーまで電車を乗り継ぎ約2時間をかけての通学。

ある日、乗り換えの駅で定期券を持っていないことに気が付いた。


今を生きる若人からすれば

「んじゃ~てめぇはどうやって駅の改札を通過したんだよ?」

と疑問に思うかもしれないが時代を考えて欲しい。

当時は自動改札機に定期券を通さなくとも通過することができたんだ。


なぜかって?


田舎の駅には自動改札機なんていう

最新鋭のマシーンはまだなかったんだよ。


確か学校の最寄駅には設置されていたと思うのだが

地元の最寄駅では駅員さんに見せて通過していたように記憶している。

まぁ遠い過去のことなので記憶違いがあるかもしれないが。


だもんで、ラッシュ時にもなると次から次へと迫り来る定期券を

駅員さんが人並み外れた動体視力で確認していたわけだ。


信じられない?

本当のことさ。

当時の田舎の駅員さんってのはそれほどに高いアビリティが必要だったんだ。


だからラッシュ時以外はたまに居ない。


ちょっと、語弊のある書き方をしてしまったね。

正確には他の仕事をしているってこと。


その場合は定期券を見せず駅構内へと入って行く。

ラッシュ時にハイパワーを使う駅員さんにも

休んでもらおうって利用者側の優しさの現れだな。


ただ、その日は見せずに通過したものだから

定期券を忘れたことに気が付かなかったわけだ。

定期券を忘れたっていうか財布自体を持っていなかったようだけど。


余談になるが、これがもっともっと時代を遡るとする。

例えば、電車の発車時間にギリギリだったとしよう。


駅に入り「待って!待って!」と大声で叫ぶと

駅員さんが運転手さんに合図をして遮断機を押し上げて通らせてくれるんだよ。

その間、電車は発車を遅らせて待ってくれているって長閑な世の中だ。


1時間ほど電車に揺られた後、乗り換えの駅で何となく気になり

鞄の中を見ると空っぽに近い状態だったのを覚えている。


「ちょ!そんなわけねぇ~だろ!」と

またもやツッコミを入れたくなる気持ちはよく分かる。

だがいいか?真面目なスチューデントたちよ。

世の中には摩訶不思議な現象ってのが稀に起こるものなんだよ。


本人はちゃんと用意しているつもりでも

「入っていない」ものは「入っていない」。


そら~焦ったさ。

プチパニックってやつだな。

京都からその学校に通っている人間は同学年にはいなかったし

そもそも利用している沿線で通学する生徒は極僅かだったのだから。


しかもこの日は少々遅刻していたこともあり、

同族と出会うこと自体がまずあり得ないシチュエーションだ。


年齢的にはヤングアダルトだが精神的にはまだまだボーイ。

どうしてよいのか一切分からない状態だった。


もちろんスマホってものは存在しない。

携帯電話も一般ピープルでは扱える代物ではない。

ポケベルですら手にするのもまだもう少し先のことだ。


なので財布がないと公衆電話も利用することができない。

このまま駅から出ることは不可能なのではないかと思われた。

今でいう「ターミナル」って映画と同じ状況だな。


途方に暮れてホームを進んでいると前方に見覚えのある女性を見つけた。


彼女は、とても大人びていて、

真っ直ぐなロングヘアーに少し目立つ服装で

タバコを吸っているっていう超絶なアレだ。

ほら、吸殻に口紅が付いているような。

ボーイにはかなり刺激が強過ぎるってやつだわな。


ついでに言っておくと、

まだ駅のホームで普通にタバコが吸える時代。

タスポなんて物はなくマネーがあって

購入するシステムを理解さえできていれば

子供でも購入できてしまうシンプルな時代だ。


「お父さんにたのまれたのー」この言葉を操ることができれば勝ち組。

間違えても「あそこのお兄ちゃんにたのまれたのー」

なんて発するお坊ちゃまには決して指令を出してはいけない。


学校では先生が職員室でタバコを吸っていたり

ラーメンや出前の丼にがっついてるのが普通の光景。

昔は「失礼しま~す」なんて職員室に入ったら煙で真っ白だったんだぞ。


学校のラーメンで思い出したが、

とても悲惨な光景を1度だけ見たことがある。

そう、あれはまだ昭和の時代。

中学1年生の時のこと。


普段は給食だったのだが何かでお弁当が必要な時があったわけ。

ある男子生徒がUFOの焼きそばを持って来ていた。

中学生にとってUFOは最高級のご馳走に見えてとても羨ましかった。


お昼になり担任にお湯を頼んだそいつは

愚民が先に貧相なお弁当を蝕んでいる様子を見ながら

高級ランチであるUFOが戻ってくるのを今かと待ちわびていたんだ。


やっとのことで担任が戻って来て、

そいつの手に作りたてのUFOが渡される。

さぁ!待ちに待った高級焼きそばUFO!

全員の注目を浴びならがそいつが蓋を開けると、、、


なみなみと張られた熱湯の中で

ふりかけの青海苔と紅しょうがが

うす茶色の海を優雅に泳いでいたなぁ。


愚民の弁当が高級ランチに変貌した瞬間。

ティーンエイジャーにして悟ったよ。

人生とは儚いものなんだって。


世の中が凄いスピードで変化している時代だ。

その担任はまだ知らなかったんだね。

お湯を捨てるインスタントラーメンの存在を。


もちろんのこと入学して直ぐに

僕はその女性担任に恋をした。


その担任は僕好みのロングヘアーで

大人びつつも可愛いらしさが・・・・・


そう、ロングヘアーと大人びたで思い出した。

同族の少ない沿線でしかも少々の遅刻をしているため

誰かに出会える確率なんて皆無だったのに。


その彼女は僕と同じスクールに通っている

この電車を利用する少数派の貴重な存在だ。

まだ1度もトークを交わしたことはないが、

同じ学科で確かクラスも同じだった。


今のこの状況を助けてくれるのはこの世に彼女しかいない。

まさしく唯一絶対の女神が降臨した瞬間。

彼女の周りには天使が舞い光り輝いているように見えた。


静かに、深呼吸をして、

勇気を出し、彼女に近付いた。


そして、

持っていたビニール傘の先端を突き付け丁寧に懇願した。


唯一の絶対神みたいな表現をしておいて冒涜も甚だしい行為だ。

きっと自己防衛本能が自然と働いた結果だったのだろうなぁ。

シャイだったヤングKATSUの精一杯の行動だったんだよ。


驚いたことに彼女は一瞬目を見開いただけで

微動だにせずこちらを見ていた。


今から思えば突然の出来事に恐怖し

凝視していただけなのかもしれないが

僕はその瞬間、彼女に恋をした。


なぜに定期券を忘れて途方に暮れている奴が

傘を突き付けながら懇願中に恋をしてしまうのかは分からない。


でも、恋ってそういうもんじゃない?


当時の彼女には年上で既に社会人と化したメンズがいたのだが

それから彼女と共に行動するようになりいつも一緒だったんだわ。

まぁ、どうなって一緒にいるようになったのかは覚えていないけど。


これ以上は昼ドラ的な濃厚ストーリー要素が入ってくるので

残念だけどこの辺りで終わっておこうね。


そうそう、

その後、彼女とはどうなったのかだけは言っておこうか。


実はね。


その彼女は、

こうしてブログを書いている


中年になってしまった僕の横で


大好きなコーヒーとタバコを片手に

あの時と変わらぬ笑顔で

この文章を一緒に読んでいる




なんてオチはありませんw

長い時間をかけてジリジリと真綿を締めるようにフラれてしまったのでw


現在は、何人もの子供に囲まれ幸せな生活を送っておられることでしょう。

それまでには波乱万丈色々とありました。

彼女が結婚を決める時、僕に1本の電話がありました。


「なぁ、


あたし


幸せになってもいい?」


日本全国、外出・移動などの自粛要請で

どこにも出掛けることができない雨模様の週末。

時間潰しのお役に立てたでしょうか。


いまは耐える時です。

決して負けないように。


コメント